今後のLPガス販売事業者の課題を考える<その12>

電力・都市ガス小売り全面自由化によって、LPガスも含めて、家庭用エネルギーの業者選びについての質問や、一般消費者向けのセミナーのご依頼を受けるようになりました。今回もお客様目線で考えたいと思います。

◆商品の取引における情報の非対称性とは

 市場では「売り手」と「買い手」が対峙していますが、一般には売り手がほぼ一方的に情報を保有し、買い手は十分の情報を保有できないことが多いのではないでしょうか。エネルギー業者の切替営業の場合も売り手(切替業者)は商品の品質に関する豊富な情報を所持しています。一方、買い手(お客様)は商品の品質に関する情報をほとんど保有しておらず、売り手(切替業者)からの説明に依存するしかありません。
 しかし、売り手(切替業者)には商品の正しい品質を買い手(お客様)に伝えるインセンティブがないため、買い手(お客様)は商品の品質に関する情報について購入するまで完全には知りえないのです。
 このように、取引・交換の参加者間で保有情報が対等ではなく、あるグループが「情報の優位者」に、他方が「情報劣位者」になり、双方で情報を共有できていない状況(情報分布にばらつきが生じている状況)が、情報の非対称性であるといいます。

◆エネルギー切替業者の攻める力 VS LPガス販売事業者の守る力

 攻める方は専従で、経験を積み重ねることで、どんどんスキルアップします。攻めるスキルは「人」につくのです。また、攻める地域も自由に選べるという特徴があります。
 一方守るスキルは人(営業マン)にはつきません。また、守るスキルはお客様とLPガス販売店との信頼関係の上に成り立つので、場所を変えての展開ができないのも特徴です。だから、攻めに比べて、守りには時間がかかるのです。
 攻める側は「切り替えるとこんなにオトクになります」とメリットを誇張することが最大の武器となります。では、守る側の武器は何でしょう。切り替え業者に営業をかけられる前に、事前の免疫トークや大量の情報発信、契約、制度、サービスの見える化など「公正な情報の提供」こそが守りの武器なのです。LPガス事業者の自由裁量で行っていた契約条件や料金制度の不透明性をお客様に「見える化」することがあらぬ不信感を抱かせない最大の防御策になると言えます。


「守る側とお客様との信頼関係の破壊」VS「お客様との信頼関係の強化」
切替業者が「今まで随分高く買わされてきましたね」と勧誘して来るのに対して、お客様自らが「今、お取引しているLPガス販売店を信頼しています。勧誘は受けません」と門前払いしてもらえるような関係をつくることが究極のあるべき姿です。そのために、情報の非対称性を解消することが重要です。