今後のLPガス販売事業者の課題を考える<その13>

電力・都市ガス小売り全面自由化によって、LPガスも含めて、家庭用エネルギーの業者選びについての質問や、一般消費者向けのセミナーのご依頼を受けるようになりました。今回もお客様目線で考えたいと思います。

◆賃貸集合の入居者はガス屋を選べない

 知り合いの息子さんからの相談です。「なぜ、LPガスはこんなに料金が高いの?ガス屋さんを替わりたいからよいお店を紹介してもらえないか?」というものでした。お住まいのエリアに弊社のお得意先もあるので「良いですよ」と簡単に返事をしたものの、話を聴いたら集合供給の賃貸アパートにお住まいだったので、オーナーさんが選んだガス屋さんとしか供給契約を結べないことを説明しました。
 不動産屋さんからは「こんなに設備が整っているのに家賃がお安い物件は一押しですよ」と言われて契約したそうです。ところが、毎月のガス代にビックリ!
間違いなく、LPガス販売事業者がガス消費機器やエアコン等の付随設備の設置費用を負担してガス料金で転嫁・回収している物件であることは業界人ならすぐに分ることです。LPガス販売事業者は賃貸集合のオーナーさんの設置費用負担に応えないと供給権が得られないので泣く泣く、要求にこたえ、かつ入居者のガス料金で回収するわけです。ところが、入居者にはそのからくりは説明されていない。場合によっては当該設置費用の償却が終了していても、高いままのガス料金を払い続けることもあるわけです。
 結局、この知り合いの息子さんは「ガス屋を選べないなら転居するしかない!」と結論を出されました。オーナーさんは入居率を上げるために設備投資をするのですが、LPガス販売事業者に供給権と引き換えに設備費用を負担させるからしょうがなくLPガス販売事業者はガス料金に転嫁する。だから、入居者が高いガス料金に驚いて転居する、「LPガスは高いから、新築する時は都市ガスもしくはオール電化にしよう!」という堅い決心をさせてしまう。



本来、建築費用として負担するべき費用がエネルギー代に含まれるようになるというこの商取引慣行を是正しないと、LPガスの価値を下げることになります。また、業界全体で是正しない限り今後、人口減少やアパートの供給過剰に伴い空き家率の上昇が予測される賃貸集合住宅市場において、アパート間競争が激化し、設備重点してくれるLPガス事業者への要求もエスカレートすると思われます。